大学教員とパンデミック

新型コロナウイルス感染症が蔓延する状況下での大学教員のストーリー

大変だけど、実はマイペースな暮らしに

コロナ禍になって、一番、困ったのは、オンライン授業への対応と見通しのなさでした。

私の勤務する大学は、途中から対面となったゼミを除いて、2020年度前期は遠隔授業でした。2020年度後期以降は、密を避けつつ原則対面。それ以後、ゼミ(4つ)と2つの講義を対面、1つの講義を遠隔との併用でやっています。学内感染があったりして、途中短期間、遠隔のみになった時期もありますけど。

一番、しんどかったのは、ほとんどの授業が遠隔だった2020年度前期でした。ゼミ以外は文書配信しかできず、3つの講義の教材を毎週、つくるのはかなりの負担でした。新入生ガイダンスのオンライン化、オンライン受講がむずかしい学生への対応などの業務もあり、必死にこなしました。2020年後期からは対面授業が基本となり、ふだんに近い形で授業ができています。大学の設備整備が進み、遠隔授業もやりやすくなっています。オンライン環境の整備で監視が容易になる怖さもありますが、背に腹はかえられない状況です。

自分の感染も不安ですので、遠隔でやりたい気持ちもあり、学生にも遠隔は人気が高いです。昼間、バイトができるからオンラインの方がいいと言っている学生もいて、複雑な思いになります。他方で、対面が好きな学生もいますし、家にいても騒々しいとか、家事や介護であてにされたりとか、勉強の障害になるいろいろな事情があるので、対面はやり続けなければならないと考えています。

ゼミ合宿やフィールドワークなど、授業以外の教育はほとんどなくなりました。ただ、何もしないのも問題なので、希望する学生と貧困者支援活動を訪れたりはしています。コロナの中でやりづらいけれど、役に立ち方を考えようとやっています。

授業以外の業務(会議、学部行事など)は簡略化されたり、オンライン化されたものもあり、負担は減っています。職場の付き合い(飲み会や食事など)は激減したので、気遣いのストレスはなくなりました。

労働や生活に関する現状分析を研究テーマとしているため、コロナ禍だからこそ調査や分析が必要で忙しいです。研究会や学会は基本的にオンラインとなっているため、参加数が増えています。労働組合の活動や講演などの社会活動はオンラインになったりなくなったりして、必要な活動だと思うところに自分で選んで参加するようになりました。

研究に時間が割けているのは、学内の会議や研究会、社会活動がオンラインになったりなくなったりして、体力的に余裕ができていること、人付き合い的なストレスがあまりないことが大きいと思います。

全体として、対面授業が原則となっても家にいる時間は増えているので、生活は健康的になっています。夫とは別居していますが、夫は飲み会が減って家にいる時間が増えたので、電話などで話す機会は飛躍的に増えました。私の場合、子どもがいないこと、親も頑張ってくれていること、住まいの周辺に商店街などコミュニティがあること、比較的おおらかな大学の管理、経済的な不安がないこと、コロナ禍だからこそ問題がクリアになり勉強がおもしろいこと、等々が、生活やメンタルの健全さを支えていると思います。

大変な思いをしている人には申し訳ないのですが、コロナ禍が終わって、あの、忙しくてストレスフルなふつうの生活に戻るのが怖いという感覚があります。

 

ペンネーム:むすいなべ

簡単なプロフィール:大学教員(非正規5年、専任6年半)

調子はどうですか?:悪くないです